内省の一葉をITのCanvasに貼る

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(娘のために、つくったお話) ”新、桃太郎”

 

(娘のために、つくったお話)

 

新、桃太郎

 

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桃生村、昔の田舎町

 

ある家庭に生まれた長男「太郎」。苗字はない。

 

最近は、この村はずっと雨が降らない。

 

作物が育たなくてみんな苦労していた。

 

太郎は、井戸を掘ることにした。

 

「何度も試したが出たためしがない」と村人はいう。

 

何か月も掘り続けた。

 

はじめは、バカにしていた村の人たち。

 

次第に、一人二人と、村の若者が太郎を手伝い始めた。

 

井戸掘りはどんどん早くなっていった。

 

ある日、ついに、水が出た。

 

太郎たちは、喜ぶのもつかの間、

枯れそうな畑にすぐに水をかけ始めた。

 

作物は、息を吹き返した。

 

村の人たちは、太郎たちにとても感謝し、皆で大事にその井戸を使いました。

 

 

秋。

 

多くの村では日照りで不作でしたが、

桃生町は、沢山、作物が育ちました。

 

それを聞き、村には、多くの人がに来ました。

 

豊かな水をたたえた井戸と作物をみて、

隣の村の人は、太郎にお願いをしました。

 

「どうか、うちの村にも掘ってほしい」

 

太郎たちは、改良を重ねて使っていた道具を整え

すぐに隣の村にゆき、来る日も来る日も、井戸を掘り続けました。

 

その村の若者たちは、太郎たちの人気が面白くありません。

 

この村は、土が固くてなかなか思ったように掘れません。

 

それでも、ひたすらに穴を掘りつづける太郎たちの姿に

その村の若者たちも、心を打たれて、一緒に掘り始めました。

 

数か月の後、村には豊かな水をたたえる井戸が出ました。

 

それから数年。

 

太郎たちやこの村の若者たちは、周辺の町に頼まれては

井戸を掘ってあげました。

 

そんな太郎の所に、山の向うのその向こう、黒の森の向うから

ひどいけがをした1人の男が来て言いました。

 

「うちの村はずっと日照りで子どもたちすら食べるものがありません。

 どうか、お願いです。太郎さんたちの力で村を救ってください」

 

その男は、そういうと命が絶えてしまいました。

 

 

村の人たちは、相談しました。

 

「黒の森には、鬼が出るという。

 この者もきっと鬼にやられたに違いない。

 行けば戻れるか分からないぞ。」

 

太郎は言いました。

 

「しかし、この村の子供たちみたいに、おなか一杯、

 飯が食えるように、してやりたい」

 

「長い旅になる。今回は、1人でゆこう。

 お前たちは、この村を頼む」

 

話し合いの間、若者たちはずっと無言でした。

太郎の両親も、ずっと無言でしたが、最後に

「出発まで、三日待ちなさい」と言いました。

 

いつも先頭きって掘る太郎の道具はもうボロボロでした。

村の若者たちは、軽くて丈夫な新しい道具を太郎に作りました。

 

両親はほしいい(炊いて乾かしたお米)を沢山、用意しました。

 

皆の気持ちを持って、太郎は黒の森の奥へと旅に出ました。

 

山を越えると、道中の村は皆、日照りに苦しんでいました。

 

「目的を果たしたら、必ず井戸を掘ろう」と心に誓い先を急ぎました。

 

 

さらに山を越え、黒の森。

 

「この森は、昼間だというのに道の先が夜中の様だ。」

 

太郎はひるまず進みます。

 

しばらくいくと、木の上から、泣き声が聞こえます。

 

見ると鬼の子が罠にかかってつるされています。

 

太郎は、鬼の子をじっとみて、悪い鬼ではないとわかり、

助けてあげました。おなかの空いていた鬼の子に太郎はホシイイを

水でもどして沢山食べさせてあげました。

 

鬼の子は、みるみる元気な体になると、

屈託のない笑顔で、ありがとう、といって、飛び上がると、

森を突き抜けて飛んで行ってしまいました。

 

太郎は先を急ぎます。

 

ついに、あの男の村につきました。

 

太郎は、その男の形見を村人に渡します。

村人たちは、食べるものがなく皆弱っています。

 

太郎は荷物を下ろすと、すぐに井戸掘りにかかりました。

 

それから何か月も、1人で堀りました。

 

太郎は、、苦労をしていました。

今までにないくらい、固い岩に突き当たりました。

仲間の作ってくれた道具もすでにぼろぼろ、

両親の用意してくれたホシイイも、底を尽きかけていました。

 

 

ある晩、穴の中で眠ってしまった太郎の元に、あの鬼の子がよってきました。

 

鬼の子は無邪気にいいました。

 

「この穴を掘ればいいのか」

 

そういうと、風のように腕を動かしすごい勢いで穴を掘り始めました。

 

固い岩もやわらかい土のようにさくさくと掘ります。

 

そして、ついに「ぷしゅ!」と、水を掘り当てました。

 

そして鬼の子は、「おいら達の力を一つ上げよう」というと

 

走りすぐに戻ってきました。

 

不思議な爪のついた小手。

 

それをひょいっと太郎に投げると、もう鬼の子はいなくなっていました。

 

太郎はつけて掘ってみると、どんな土でも簡単にほれました。

 

太郎は日の出までに、太郎は、井戸から各畑への水路を作りました。

 

そして日の出までに完成し、太郎は寝てしまいました。

朝日を浴びると、鬼の小手はすっと消えてしまいました。

 

 

朝。

 

水の流れる音で村人たちは、驚いて目覚めました。

 

日照りで枯れていた畑に、水が来ています。

 

村人たちは、太郎に感謝し、水を飲み、畑に水をまきました。

 

 

しかし、太郎は日が昇って、夜になって、次の朝になっても目覚めません。

太郎はそれから、ずっと井戸のわきで眠り続けました。

 

 

それから一年。

 

村の畑には作物がしっかりと実りました。

 

村長の家に運ばれた太郎がついに眼をさまし、子供たちがおなか一杯ご飯を

食べている姿を見て、喜びました。

 

村人たちは、太郎に感謝とともに、道中の食べ物を持たせました。

 

桃生の村へ帰る道中、太郎は行く先々で、井戸を掘ってあげました。

 

 

太郎の通った道沿いの村は皆、沢山作物が撮れるようになり、

感謝した人たちは、お礼の作物をもってくるようになりました。

宝物のように、つややかに実った果物や珍しい野菜が村に届きます。

 

桃生(ものう)の太郎が開いた井戸は、いつしか、桃太郎井戸、と呼ばれ

人々を飢餓から救ったとしてずっと感謝されました。